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小春食堂【ARS】

第17章 劇団俳優【潤】

「来月さ、うちの劇団の公演があるんだ。小春ちゃん、よかったら来てくれないか。」


俺は、一枚のチケットを差し出した。


「俺、結構いい役がついたんだ。」

「へぇ、潤くんの舞台ね。これって、私みたいなアラフォーのオバサンが行っても大丈夫なん?」

「小春ちゃんはオバサンなんかじゃないよ!」


俺は立ち上がって叫んだ。
店内の客たちが振り返って俺に注目している。
俺はそろりと座り直した。


「えっと…。年代は関係なく楽しんでもらえる内容だと思うよ。」

「ふふふ。わかった。おおきにね。」


小春ちゃんは、チケットを受け取ってくれた。

本当は、小春ちゃんが友達も誘えるように2枚用意したかったんだけど…。
公演のチケットは買い取りだから、貧乏な俺には一枚しか用意できなかったんだ。


「ごめんな、チケット、一枚だけで。」


小春ちゃんは、首を振って笑って言った。


「そんなん、ええよ。どうせ誘う相手もいないし。」

「小春ちゃん、彼氏いないの?」

「え~、そういう潤くんはどうなん?いるやろ、彼女。」


小春ちゃんは、いつもそうやって俺の質問をはぐらかす。


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