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小春食堂【ARS】

第18章 ぶり大根【潤】

「で、今日のメニューは何?」


小春ちゃんが料理がのったお盆を運んできた。


「今日は、ぶり大根や。」

「うまそ~!でも、これ、色が薄いね。」


皿の上のぶり大根は、うっすらと醤油の色がついているだけだ。


「俺が食ったことあるぶりの煮物は、もっと黒いよ。」


俺は、そう言いながら口に運ぶと…。
色は薄いが、上品な出しと醤油の味が口に広がる。
大根は、溶けるようにほぐれる。
色は薄いが、味はちゃんと染みている。


「薄口醤油を使ってるからな。東京は濃口醤油を使うんやろうけど、京都の煮物は、ほとんどが薄口やね。」


「そうなんだ。小春ちゃん、作り方教えてよ。」

「え~、企業秘密や。」

小春ちゃんは、けらけらと笑ってカウンターの向こうに消えて行った。

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