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小春食堂【ARS】

第19章 坊(ぼん)【潤】

あれは、俺が家を飛び出してしばらくたった頃だ。

大学に行かずに役者を目指すことを親に反対されたんだ。

だから、高校卒業とともに家出して、あちこちを転々としていた。

友達んちに転がり込んだりもしたけど、やっぱりあまり長くいると疎ましがられて。

行くところがなくなったら、夜の繁華街に立った。


「キミ、ひとり?」


見ず知らずの女が声をかけてくる。

俺は黙ってうなづく。

そのやりとりだけで、たいてい女は、部屋に泊めてくれた。


そして俺は、泊めてもらった代償をカラダで払うんだ。

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