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小春食堂【ARS】

第20章 ぶぶ漬け【潤】

「あっはっは…。」


女主人は、涙を流して笑い転げている。
俺は、何だか腹が立ってきた。


「なっ、何だよ!何がおかしい!馬鹿にすんな!」


俺は怒鳴って、カウンターの椅子を蹴った。


「か、かんにん。今どき、京都でもぶぶ漬けで追い返したりせぇへんで。」


まだ、女主人は笑っている。
くそっ、この女!


「帰るよ!もう金も払ったしな!」


俺は踵を返すと、歩き出した。


「坊(ぼん)、本当にぶぶ漬け食べていき。定食は完売してしもて、有りものやけど。」


そう言うと、女主人はカウンターの向こうに消えて行った。

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