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小春食堂【ARS】

第21章 幕が上がる【潤】

小春ちゃんは、興奮して舞台の感想を語ってくれた。

そこへ、仲間の一人が通りかかった。


「潤、姉さんが観に来てくれたのか?よかったな。」


仲間は、俺の肩を叩くと楽屋に入って行った。

今まで熱くまくし立てていた小春ちゃんの顔が、一瞬凍りついた。


「あ…、あいつ、俺が家を飛び出したこと知ってて…。家族が観に来たと勘違いして喜んでくれたんだと思う。」


そうだ。食堂でチケットを渡した時、小春ちゃんは言ってた。

『私みたいなアラフォーのオバサンが行っていいの?』

多分俺より年上の自分のこと、気にしてたんだと思う。


「あの…、ごめん。」


謝る俺に、小春ちゃんは目を細めて言った。


「ううん。潤くん、いい友達もってよかったなぁ。」


うん、そうだな。
劇団の皆は、本当にいい奴ばかりだよ。


「まあね。」


小春ちゃんは、うんうんとうなづいた。

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