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【S】―エス―01

第4章 あかねいろ

 
「犯行直後、現場近くの防犯カメラであなたの姿が確認されてるんです。あなたは【S】が何か知ってるんじゃ?」


 「あなたが【S】なのでは?」喉元まで出かけたその言葉をぐっと堪え、香緒里は詰め寄る。


「さあな」


 目の前の瞬矢の飄々(ひょうひょう)とした態度に香緒里は毒気を抜かれ、冷静さを取り戻す。


 瞬矢は備え付けの灰皿に煙草の灰を落とし、わずかな微笑と共に「でも……」と言葉を続ける。


「きっとまだ続く」


「……そうね」


 応えるように香緒里も口角をつり上げ一言そう返す。2人の間に、緊張感にも似たえもいわれぬ空気が漂う。


 状況証拠は全て彼を示している。だが明らかに足りないものがあった。


 それは中川との接点、そして動機だ。


 香緒里は一旦退くことを決める。


(斎藤 瞬矢、あなたは私が必ず……)


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