【S】―エス―01
第4章 あかねいろ
――201X年 4月6日。
正午過ぎ。ソファに寝転び、ぼんやりと天井を眺めていた。
昨日の男の言葉は、瞬矢にとってとても興味深いものであった。
何故ならば【S】とは、すでに死んだ弟、刹那が何かしらの形で残したメッセージのようなものと考えていた為だ。
視線を、天井からガラステーブルの上に置いてあるメモへと送る。
瞬矢には躊躇(ためら)いがあった。
メモに記された場所へ行けば【S】の、過去の全てを知ることが出来る。しかし、それは同時に今までの自分を根底から覆すことになるかもしれない。
『斎藤 瞬矢』として生きてきた自分を――。
それがどれほどのことなのか、考えただけでも恐ろしい。
メモの傍らにおざなりとなっていた東雲 暁の関係者資料へと視線を移す。
不意に思い出されたのは、今回の依頼人、東雲 茜の姿だった。
茜とはまだ出会って間もないが、彼女といると、自然と振る舞える。こんなにも短期間で打ち解けたのは、瞬矢自身初めてのことだった。
(まさか……)
ほんの一瞬よぎった推測。
正午過ぎ。ソファに寝転び、ぼんやりと天井を眺めていた。
昨日の男の言葉は、瞬矢にとってとても興味深いものであった。
何故ならば【S】とは、すでに死んだ弟、刹那が何かしらの形で残したメッセージのようなものと考えていた為だ。
視線を、天井からガラステーブルの上に置いてあるメモへと送る。
瞬矢には躊躇(ためら)いがあった。
メモに記された場所へ行けば【S】の、過去の全てを知ることが出来る。しかし、それは同時に今までの自分を根底から覆すことになるかもしれない。
『斎藤 瞬矢』として生きてきた自分を――。
それがどれほどのことなのか、考えただけでも恐ろしい。
メモの傍らにおざなりとなっていた東雲 暁の関係者資料へと視線を移す。
不意に思い出されたのは、今回の依頼人、東雲 茜の姿だった。
茜とはまだ出会って間もないが、彼女といると、自然と振る舞える。こんなにも短期間で打ち解けたのは、瞬矢自身初めてのことだった。
(まさか……)
ほんの一瞬よぎった推測。