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【S】―エス―01

第25章 白日のもとに

 ぐしゃり、握り潰したメモをポケットに仕舞いながら、ふっとひとつ溜め息を吐く。


「……さて、と。そろそろ行くか」


 薄紫色の瞳で、目標である前方の小高い山を見据え、前屈気味に勢いをつけ軽快に右足で地を蹴る。


 地面を離れたその体は、ふわりと空中で大きな弧を描く。そしてその姿は次第に小さくなり、やがて山々の裾野に広がる深緑の先へと溶け込み消えていった。


 彼のいた場所には乾いた風がそっと吹き抜ける。




 第一部‐始の記憶‐ 完
 

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