少女グレイスと森の魔女
第8章 森の奥へ
56『困ぱい』
グレイスを追って森の中を行く男はいよいよ歩きづらくなって四苦八苦していた。
進むべき方向は分かってはいるのだが、茂みや木々を避けて大きく迂回すればたちまち方向がわからなくなる。
せめて昼間なら足元をこんなにも汚さずに迷わず歩けただろうに。
木々の葉の間から空を見上げてみても月や星が見えるわけもなく暗い雲から雨が落ちてくるばかりで、上下左右どこを見ても同じような景色が続いているように見える。
皮肉にも迂回したくなるような物だけが嬉しくもない変化を見せてくれていた。
おかげで風雨を凌げてもいられるのだが。
木の枝の先が男の肩や顔にかかり、しなっては後ろで空を切る。
落ちている湿った枝や葉を踏みしめる音のなんと心地良くないことか。
気のせいか、どこからか木の焼けるような匂いまでしてくるではないか。
グレイスを追って森の中を行く男はいよいよ歩きづらくなって四苦八苦していた。
進むべき方向は分かってはいるのだが、茂みや木々を避けて大きく迂回すればたちまち方向がわからなくなる。
せめて昼間なら足元をこんなにも汚さずに迷わず歩けただろうに。
木々の葉の間から空を見上げてみても月や星が見えるわけもなく暗い雲から雨が落ちてくるばかりで、上下左右どこを見ても同じような景色が続いているように見える。
皮肉にも迂回したくなるような物だけが嬉しくもない変化を見せてくれていた。
おかげで風雨を凌げてもいられるのだが。
木の枝の先が男の肩や顔にかかり、しなっては後ろで空を切る。
落ちている湿った枝や葉を踏みしめる音のなんと心地良くないことか。
気のせいか、どこからか木の焼けるような匂いまでしてくるではないか。