少女グレイスと森の魔女
第8章 森の奥へ
61『脱兎』
男は先ほど焚き火にかけた土を払いのけ、薪をくべて再び火勢を強めようとする。
その時、グレイスは急に身をひるがえして逃げ出した。
岩陰に置いた荷物には目もくれず。
男は即座にそれに気付いてグレイスを追いかける。
グレイスは一本の大木の脇を走り抜ける時、後ろを振り返って男の本性を見る。
穏やかだった男の表情からは余裕が消えてなくなり、目は血走るぐらいに大きく開き、丁寧に整えられていたであろうヒゲはひどく乱れていた。
それを見てブルブルと身を震わせたグレイスは慌てて走り出すが、地面から盛り出た大木の根元に足をすべらせ、体がふわりと宙を舞う。
そのまま仰向けになってバタッと倒れてしまった。
「あうっ…!」
すぐに後から追いついた男はふうふうと息を吐きながらグレイスを見下ろし手に力をこめる。
「あ、ああ…」
そこに突然、ばさりとフクロウが2人の間に割って入るように飛んできてヒゲの男の目前を横切った。
「やれやれだね、まったく」
声のした方へグレイスが顔を向けると、そこにはお手製の弓矢を携えた老婆が立っていた。
「お…、お婆さーん!」
男は先ほど焚き火にかけた土を払いのけ、薪をくべて再び火勢を強めようとする。
その時、グレイスは急に身をひるがえして逃げ出した。
岩陰に置いた荷物には目もくれず。
男は即座にそれに気付いてグレイスを追いかける。
グレイスは一本の大木の脇を走り抜ける時、後ろを振り返って男の本性を見る。
穏やかだった男の表情からは余裕が消えてなくなり、目は血走るぐらいに大きく開き、丁寧に整えられていたであろうヒゲはひどく乱れていた。
それを見てブルブルと身を震わせたグレイスは慌てて走り出すが、地面から盛り出た大木の根元に足をすべらせ、体がふわりと宙を舞う。
そのまま仰向けになってバタッと倒れてしまった。
「あうっ…!」
すぐに後から追いついた男はふうふうと息を吐きながらグレイスを見下ろし手に力をこめる。
「あ、ああ…」
そこに突然、ばさりとフクロウが2人の間に割って入るように飛んできてヒゲの男の目前を横切った。
「やれやれだね、まったく」
声のした方へグレイスが顔を向けると、そこにはお手製の弓矢を携えた老婆が立っていた。
「お…、お婆さーん!」