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６７『沼』


クレアの母は無言でヒゲの男に近づいていく。


｢はーっはっは…｣


｢ぐあっ！ぐむぅ…｣

男の太ももにナイフが突き刺さる。

続けて拳くらいある石で男は下がった頭を打ちつけられた。

｢…あがっ！｣


｢その笑い、やめてくれないかしら？胸が悪くなるから｣


男はうめいて片膝をつく。


｢あの時とは逆の立場ね。
私は首に刃物を突きつけられただけで怖くって何も抵抗できなかったけれど…
今の気分はどう？｣

｢あれ以来、姿なんて見なかったのにいつからか戻ってきてたのね。
ヒゲを伸ばして知らない間に同じ町に住んでたなんて…考えただけで吐き気がするわ。
それが町長ですって？｣


｢…ふっ、キミもおかしな女だな｣


女は再び男の足にナイフを突き立てる。

｢ぐぅ！あっ……！｣


力まかせに肉を裂いてゆく。

｢誰のせいでこうなったと思っているのよ、ねぇ？｣


たまらずヒゲの男は女を突き飛ばし、近くにある沼の方へと足を引きずりながら向かう。


｢どこに行くつもり？その足では逃げ切れないでしょう？｣


｢逃げる？はぁ…
そんな…気はないが、ね…｣


｢だったら何をしたいの？本当にわけのわからない男｣