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６６『世界』


｢町長さん
私のこと覚えてらっしゃる？私は覚えているわ。
私は15歳の時、この森であなたと会っているから…
忘れもしないわ｣



老婆は軽く手を振って何か合図のような事をした。
誰にでもなく


するとフクロウが翼を広げてグレイスめがけて滑空を始める。



｢…えっ？何？
あーん！ちょっとー!?｣



女は淡々としゃべり続けている。



フクロウはグレイスの周りを飛び回ってしきりにグレイスの体をつつく。

グレイスが逃げ惑っている間、大人たちの世界は女を中心にしんと静まり返っていた。




｢…だから…
…なんでしょうね？
町長さん｣


話し終えた女はナイフの先をヒゲの男に向ける。



その場にいる大人たちは皆、ヒゲの男を見ていた。



老婆の顔は頭巾の影によって鼻まで隠れていたが、口は一文字に固く閉ざされている。


クレアの父にいたっては開いた口から声も出せずに、ぼう然と両膝をついていた。



ヒゲの男は顔を両手で覆い、その肩は微かに震えている。



｢ふふふ、なるほど…
くっくっく…
はーっはははは！
こいつは傑作だ！
はーっはっはっはっはっ！｣

ヒゲの男が狂ったように笑う。