少女グレイスと森の魔女
第10章 森の中の夢
74『夢幻』
夏がきて森は深い緑に覆われた。
木の葉はキラキラと輝き、木洩れ日の降り注ぐなかを、手に花を抱えた少女がとことこと歩いている。
少女は抱えた花を大きなモミの木の根元にそっと置く。
幾ばくかの時は少女を少しだけ大人へと成長させていた。
湖畔にまで出て来た少女は、おもむろに全ての服をその場に脱ぎ捨ててそのまま湖に飛び込んで泳いでいった。
湖の真ん中あたりまでくると、少女は息を大きく吸い込んで口を膨らませて水中へと潜っていく。
そして湖の底を背にして水面を見上げながら漂い始めた。
握られていた手をゆっくり開くと、太陽の光を浴びた宝石が幻想的な輝きを放ちだす。
宝石を掲げて見ていた少女の目は突然、別の何かを捉えた。
驚いた少女の目の奥から途端に感情が溢れ出してくる。
その目に映ったものに手を触れようと少女は手を伸ばして必死でもがくがそこには何も無い。
その内に息が続かなくなり、水面に浮上し再び口を膨らませて潜っていくが、その後何度潜ってみても探しているものが少女の目に映ることはもうなかった。
少女は諦めて水際へと上がる。
宝石を湖の底に残したまま
夏がきて森は深い緑に覆われた。
木の葉はキラキラと輝き、木洩れ日の降り注ぐなかを、手に花を抱えた少女がとことこと歩いている。
少女は抱えた花を大きなモミの木の根元にそっと置く。
幾ばくかの時は少女を少しだけ大人へと成長させていた。
湖畔にまで出て来た少女は、おもむろに全ての服をその場に脱ぎ捨ててそのまま湖に飛び込んで泳いでいった。
湖の真ん中あたりまでくると、少女は息を大きく吸い込んで口を膨らませて水中へと潜っていく。
そして湖の底を背にして水面を見上げながら漂い始めた。
握られていた手をゆっくり開くと、太陽の光を浴びた宝石が幻想的な輝きを放ちだす。
宝石を掲げて見ていた少女の目は突然、別の何かを捉えた。
驚いた少女の目の奥から途端に感情が溢れ出してくる。
その目に映ったものに手を触れようと少女は手を伸ばして必死でもがくがそこには何も無い。
その内に息が続かなくなり、水面に浮上し再び口を膨らませて潜っていくが、その後何度潜ってみても探しているものが少女の目に映ることはもうなかった。
少女は諦めて水際へと上がる。
宝石を湖の底に残したまま