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少女グレイスと森の魔女

第2章 昼下がりの森

9『笑み』


どこからともなく一陣の風が吹き、森全体がざわつき始めた。



風はグレイスの肩まである波打った髪を煽り乱し、グレイスから宝石以外の視野を奪ってゆく…。



風の中、ひとりたたずむグレイス。












「おやまあ、よく採れたじゃないか」

帰ってきたグレイスに母は籠の中を見ながら声をかけた。


「さあ、おくれ。夕飯の支度に取りかかるとするかね」








「どうしたんだい?浮かない顔をしているね」



「ううん、なんでもない」
グレイスは自分の部屋へと入っていく。



『…』

母はグレイスの服の腰のあたりにある小さなポケットが僅かに膨らんでいるのを見てとった。

しかし、それは別に珍しいことではなく、グレイスはたまに遊び道具や髪留めなどをポケットに入れていたりするので気にはとめなかった。



……


部屋に戻ったグレイスは、ドアの内側に背もたれして安心したようにひとり口元をゆるませていた。

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