ひざカックン
第9章 てんき
「…あのさ…ごめんね」
僕は意を決して彼女に謝る。
謝ることが正しいのかわからなかったけど。
「…うん…でもいいの」
風が吹いていく。
夏の終わりの風、秋の始まりの風。
「ありがとう」
僕は彼女に手を差し出した。
彼女はそっと僕の手を握った。
僕らは握手して、見つめ合った。
…マタイツカ…
僕は心の中で呟く。
彼女の目に涙が浮かんでいる。
…マタイツカネ…
彼女の声が聞こえた気がした。
…
「…握手って、今さらなんだか恥ずかしいよね…」
そう言うと、彼女は僕の手を離して、行ってしまった。
角を曲がって消えるまで彼女の背中を僕は見送っていた。