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風景画

第37章  poemtory 〜カクテルはジンベースで Ⅱ




ビルの最上階で

エレベーターを降りれば

目の前には天国への扉がある…



そして扉の内には

濃紺の夜空を映す窓



同じ時間に来ていても

もう夜景とは…

日の入りが早くなった

今夜は

コスタ・デル・ソルで

夕日に思いを馳せようか



目の高さにグラスを掲げれば

あたりはオレンジに染まり

やがて静かなため息に包まれる



そういえば

星の王子さまに

彼が44回日が沈むのを見た、と

語るシーンが出てくるでしょう

心が本当に悲しいとき

人は夕日が見たくなるって…



闇に覆われた窓の外を

夜間飛行のライトが

小さくまたたき渡ってゆく



ときどき思うのだけど

王子さまは

ここにいても、という迷いは

なかったのだろうか…

そんなにも

薔薇に想いを

残していたのだろうか

なんて、ね



心にあの人を抱きながら

グラスの夕日を飲み干した



ああ

秋…は何か物寂しいね

しみじみと

だけど、

それだから

酒が美味くなる

今夜はマッカランで締め括ろう…



グラスの中で氷がくらりと傾いた







(了)


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