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風景画

第59章  intermezzo 〜マスカレード




蒼い月が

闇を静かに引き裂きながら

昇りゆく



今宵の宴は一夜の戯れ

仮面舞踏会の幕があく



華麗なワルツ メヌエット

まばゆい光を受けて

壁に映る影さえ踊る



偽りも真実も

刹那の夜に隠されて…



ここに侯爵と呼ばれる男

ひとりの貴婦人へと

まっすぐに歩み寄る



恭しく延べられた手に

白い仮面の下

恥じらいがほのかに浮かび

絡まる指は強く握られ

熱をもつ



「お慕いしておりました…」



想いを湛えた侯爵の囁き

それは

探し続けた恋との邂逅



「あの日より

忘れたことはありませぬ」



どれほどに隠し装うも

その唇が 指が 薫りが

見紛うことなき

狂おしさを呼び覚ます



戯れに隠された悔悟

偽りの中の真実…



焦がれ続けた ただ ひとりの人



一夜の恋は時を超え

今ふたたびの恋となる







(了)



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