風景画
第80章 poemtory 〜カウンター憧憬 Ⅲ
その店の
折々の夜空を映す大きな窓は
静かに飲みたい時の友となる
今夜も
グラスを傾けながら
カウンターに心をひっそり
とまらせる
海を見るならシャンパンブルース
甘い思い出に浸るなら
ベルベット・キスを
飛び切りドライなマティーニは
一日の終わりにふさわしい…
カクテルは 一杯の夢
ひととき心を委ね
時の狭間で束の間を遊ぶ
やがて
グラスを重ねるごとに
恋しい想いが顔を覗かせ
幻と戯れながら
深く どこまでも深く
酔ってゆく
このまま
すべてを昇華してしまえたら
自分だけの小さな星を
見付けられるだろうか
あの空の遠くに…
…それも また 夢
(了)