風景画
第16章 intermezzo 夢幻〜ユニコーンの孤独
緑濃い森の奥深く
蒼く澄んだ湖のほとりに
彼は佇んでいた
雪のように輝く姿…
長い角は誇り高い勇者の証し
静かな眼差しで空を仰ぎ
風の声に耳を傾ける
昼の暝黙 夜の饒舌
森の神秘はその身を隠す
かつての一族はもはやなく
いにしえの猛りも戦いも
遥か遠い時空の彼方
濃紫の闇に抱かれ微睡んだ
乙女の膝も今はない
皆 どこへ行ってしまったのか…
月を掻き抱くほどに立ち上がり
たてがみを震わせる
夜を切り裂く細い叫び
その
青い瞳に浮かぶ涙を
誰が知るのか…
(了)