風景画
第18章 poemtory 〜記憶の扉は8秒間叩かれる
沸騰する体の熱が
命に伝わることはなく
やがて
この手の中で瞼は閉じられ
くたりとした重さだけを残した…
コツ――――
お前 やっぱり………
コツ――…
そう、聞いてみたいことがあった
あの日からずっと
お前 あの最期の時
空を見たのか?
その瞳に
空を映すことができたか?
コツ…
そうか 見たんだな
それだけを、聞きたかった
よかった それなら 良かった…
コツ―――…
待ってくれ
それならなぜ ここにいる?
飛び去る鳩の姿を追い
思わず体を起こした耳に
ざわめきと
カウントするレフェリーの声が
なだれこむ
眩しいライトの下
エイトカウントで立ち上がり
胸の前で無意識にグローブを構える
再び始まる闘いの渦の中
遠く羽ばたきの音を聞いていた
(了)