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凍夜

第6章 浸食


「でもね、この一本のワインの歴史が個人の歴史に足跡を残す事もあるんだ……。」


川原はそう言って、深いため息をついて空を睨んだ。


「ハーフムーンの広告にも、そう書いてあったね?」


両手を大きく一回叩いて、私に身を乗り出した。

「あれは書いたのリナさん?」


私は黙って、川原を見つめた。


私の足元がすくわれていくような気がしていた。

ここで、うろたえる訳にはゆかない……。


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