ネムリヒメ.
第8章 雨.
手当てをしてもらったあと夕食の準備をするのに葵くんが部屋を出ていって、再び渚くんとふたりになる
外ではまだ激しい雨が窓ガラスを叩きつけていた
「チーズケーキはやんねーよ」
「ぇえっ!!」
さっき、渚くんとチーズケーキを巡った争いが起きかけたけれど、やっとケーキにありつけたアタシは彼とソファーに座りながらテレビを見ていた
カラダも温まって、ケーキも食べて満足して、ホッとしていると自然と瞼が落ちてくる
買い物に奮闘した疲れと、それに今朝あんまり寝てないから眠いんだな…
正しくは寝かせてもらえなかったんだけど…
うとうとと温かい体温を求めてコトンと隣に座る彼にもたれかかった
「ん…!?」
「眠い……渚くんのせい…でねむ…」
ガクンと首が落ちて言葉が途切れる
「っ、ここで寝るな…ベッドいけ」
「ん…やだ…ムリ…ぃ」
睡眠欲というアタシの本能は無意識に言動をむちゃくちゃにするらしい
「風邪ひくから…」
「…やだやだ…でも…風邪も…ゃ…」
瞼はもう完全に落ちて、頭のなかはゆらゆらとぬるい浮遊感を覚えていた
ため息をこぼす彼のシャツをギュッと掴んで顔を擦り寄せると渚くんの匂いでいっぱいになる
なんか安心する…
心地よい彼の体温がアタシを眠りの世界へと背中を後押しする
「千隼っ」
「んん…」
どっか遠くの方で渚くんの声がするけど瞼が重くて開けられない
すると、ふわっとカラダが浮いたような気がしたけど 眠気が勝ってよくわからなかった