ネムリヒメ.
第15章 イチゴタルト.
髪に触れているアタシの手に、彼の手が重なる
「お前…それやめろ……」
そう囁く彼の濡れた唇
「は…んん…っ……!!」
離れたと思ったら、息をつく間もなく深く口づけられ苦しくて思わず胸板を押し返す
呼吸を乱したアタシから唇を離し、額が触れる距離にある渚くんの綺麗な顔
「……じゃねぇと…やめらんなくなる」
低い声が頭のなかに響いてさらに鼓動を早める
「お前のその声も、顔も…だから……」
重ねられたままの手に、彼の指が絡まる
「全部よこせよ…」
「…………!!」
彼の言葉に全身の力が抜けてしまって、しばらく動くこともできずにゆっくりと瞬きを繰り返す
アタシを見つめたままの渚くんの揺れる瞳には、同じく瞳を揺らす自分が映っていた
「……ぜん…ぶ…って…」
なんとか絞り出した声は掠れていて、うまく言葉が出てこない
すると…
「……わかんだろ…」
「…………!!」
彼の、言葉を失うほどの綺麗な表情に
息を吸った胸がヒュッと音をたてた
白い光を反射した髪を揺らしながら、艶やかな表情で渚くんはゆっくりと口を開く
「お前の…全部……よこせよ」
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