ネムリヒメ.
第15章 イチゴタルト.
呆気に取られていると聖くんが顔を除きこむ
「涙止まったぁ!?」
「あ……ありがと…」
そう告げると彼は柔らかく微笑む
「忘れないうちに言っておくけど、さっき言ったのは冗談じゃないからね」
「……!?」
さっきのって…
聖くんは葵くんたちの目を盗んで軽く唇を啄むと、声を低めて耳元でそっと囁く
「ちーちゃんが欲しいって話」
「…………!!」
「オレ、ワガママだし諦め悪いから…覚悟して…」
「んっ…」
頭のなかに彼の声が響いて、ゾワリと背中が粟立つ
ピクリと揺れる肩に、顔を戻した聖くんにはちょっとだけ意地の悪い笑みが浮かんでいて
「あはっ、なにカンジてんの!?」
「っー!!!」
顔に火が着いて一気に鼓動が早まる
悪魔めっ、悪魔めっ…
そして葵くんが朝食を運んできてくれて、手を合わせようとしていると、ダイニングの扉が開いて電話を耳に当てた渚くんが入ってきた
誰かと電話で話している彼は、アタシの泣き顔と聖くんの前に置かれたタルトの残骸を見ると、
食べられなかったのね…と、悟ったようでため息をこぼす
って…ねぇ、誰のせいよ…
とも言えず、窓際で新聞を広げながら話を続ける彼に膨れっ面を返しながら朝食に手をつけた