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ネムリヒメ.

第19章 記憶の中の摩天楼.






…ピンポーン


「……………」


ピンポーン……


「……………」


鳴り響くチャイムの音に、一向に返事のない部屋の前


「は……!?」

「あ…れ……!?」


戻ってきたアタシと雅くんは返事のない部屋の前の廊下で立ち尽くしていた


「…アイツらふざけてンのか」


隣で苛立つ彼のチャイムの連打にも関わらず、一向になんの応答もない


「チッ…仕方ねぇな、ルームキー…」

「え!?」


ルームキー…って言われても、もちろんアタシは持っていないわけで

彼を見ながら首をかしげると…


「取って…ジャケットんなか」

「あ、うん」


両手をアタシのバックと荷物で塞がれた彼にそう言われて、雅くんのジャケットのポケットに手を入れる

しかし


「そっちじゃねぇよ…」

「え、どこ?」


左右のポケットのなかは空っぽで、なにもつかめず泳ぐアタシの手


すると、


「…胸の内側」

「……………」


え……!?

今…胸の、内側…とな!?


「おら、早くしろ」

「っ…あ、ううん」


一瞬固まったけれど、ピリピリした彼に急かされ恐る恐る彼のジャケットのボタンに手を伸ばした

う…なんだか緊張する

腰を抱かれた時よりも、なんていうか…

離れてるのに、視界いっぱいに映る彼の胸元に意識すればするほど鼓動がだんだん大きくなって

ボタンを外してジャケットを開けば、柔らかい石鹸のような彼の匂いが一気にアタシを包み込んで、耳があっという間に熱くなった




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