ネムリヒメ.
第3章 無くしたモノ.
「かえで…っ」
自分の声にハッと我に返った
「アタシ、楓に会いにきたのっ!!」
アタシのはっきりした声に、聖くんが目の前でうんうんと頷きながら目を細める
…楓はアタシの大好きな人…
誰よりも優しくて
誰よりもカッコよくて
誰よりもアタシを理解してくれる…
大切な…
大切な…ひと
ただ…血の繋がった兄であることがなんとも惜しい
幼い頃は楓のお嫁さんになりたいって本気で思ってた
実は今でも密かにそう願っているくらい楓のコトが大好きだった
だから、日本で一緒に暮らそうって言われた時はすごく嬉しくて…
こうしてイタリアから日本に帰ってきたんだ
…なのに
今ここに 楓がいない
「ねぇ、楓は!?」
なんで!?
ホントだったら、今頃は楓と一緒にいるはずなのに
頭の中が楓でいっぱいになる
なんでっ!?
こんなはずじゃない
頭のなかの理想と目の前の現実の違いに
不安でいっぱいになる