ネムリヒメ.
第5章 シャンプーとアイスクリーム.
興味がないわけではない
ただ、仕事や肩書きの先入観で人を見るのがあまり好きではないからだ
確かに仕事や肩書きはステータスかもしれない
その人の判断材料のひとつではあると思う
しかしだからといって、それを知ったところでコロコロと身の振り方を変えるのは嫌いだ
というか、むしろその逆…
アタシは表面(おもてづら)しか見ない人間がキライだった
それを知ってか知らずか、なにも聞かないアタシに渚くんはそれ以上なにも言わなかった
その代わり、ソファーに座るアタシの前にきて
身を屈めて背もたれに手をつく
「っ…!?」
目の前に渚くんの綺麗な顔がある
息がかかりそうな距離に肩をすくめた
「千隼…」
彼の切れ長の目がアタシを捉え、優しい声色で彼に名前を呼ばれ心臓が鳴る…
ちょ、ちょっ、ちょっと待って…
鳴るな、心臓
なんでドキドキしてるの
さっき思いきり笑われたじゃん
楓ひとすじ宣言したばっかじゃん
なのに…
気がつけば まっすぐ見つめる彼の漆黒の瞳から
アタシは目が離せなくなっていた