ネムリヒメ.
第26章 夜明け.
「…よーし、完了♪」
「なら葵、さっさと行くぞ…」
「リョーカイ、リョーカイ、よーいしょ♪」
「は…?」
「ん!?」
大きな疑問詞を掲げ見上げる雅に、床に転がった郁を担ぎ上げた葵が首を傾げた
「なに、みっくんも行きたいの?」
「え…」
「一緒に沈みたい?」
「あ…!?」
「うーみ♪」
「……!!」
お前はどこぞの金髪ヤンキーか
葵の笑顔が恐ろしく見えるのは気のせいだろうか
どことなく漂う影に雅は言葉を詰まらせる
すると、
「ダメだ、お前は千隼と風呂だ」
今度はくわえタバコでネクタイを緩めた渚が雅を顎でしゃくった
「さっきプールに沈んだばっかだろ。海なら後でいくらでも沈めてやるから今度にしろ」
「………」
鋭く光る眼光…
こっちはこっちでどこぞの国のマフィアか
ライターの蓋を小粋に鳴らして紫煙を燻らせるその背中にもまた、ただならぬ影が漂っていた
「寝ても覚めても絶対そいつのこと、ひとりにすんなよ…」
「みっくん、わかったならお返事は?」
真っ赤なトマトゾンビを担いだヤンキーと、銃刀法違反を堂々と犯すマフィアがそれぞれ雅の胸元を手繰りよせる
「おい…わかってんだろうな」
「お返事が聞こえませんけどー」
「……ッ─!!」
身の毛もよだつような形相で、これでもかという圧力を掛けてくるふたりに雅は必死に首を縦に振る