ネムリヒメ.
第5章 シャンプーとアイスクリーム.
しかし、
「でもそんなんじゃ…楓、楓って言えなくなるのも時間の問題だな…」
「っ…」
面白そうに上から見下ろす彼にそう言われ、思わず潤んだ瞳で渚くんを睨んだ
「……そんな物欲しそうな顔で睨まれても…ね」
ククッと喉をならしながら、ニヤリと口角をあげる彼
そしてそんな言葉とは裏腹に身を屈めて優しく髪を撫でてくる
「んっ…」
それだけでゾワッとした甘い感覚がはしり、ピクリとカラダが揺れた
渚くんはそんなアタシの反応を楽しみながら腰をあげる
彼の体温が離れる
「おやすみ…」
「っ…」
なんか変…
そこにいるのは微笑む彼に名残惜しさを感じている自分
おかしな自分に戸惑いながら彼の背中を見つめる
そして渚くんは去り際に、何かを思い出したかのように振り返った
「シャンプーなら…オレの部屋のバスルーム使えよ」
放心するアタシに満足そうに微笑み、彼が扉を閉める音が静かになった部屋にこだまする
「……………」
渚くんが部屋を出ていったあと、アタシはしばらくそこから動くことができなかった
熱を帯びたカラダには壁の冷たさが心地いいくらいだった
歯列をなぞり口内を犯す彼の熱い舌の感触がまだ鮮明に残っている唇
その濡れた唇にそっと触れ、指でなぞる
アタシはそのまま、ぼんやりと部屋の中を見つめていた