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未知夢

第3章 酒席

 お酒が入ると、学生時代の頃の様に二人は談笑した。


 繁もさっきまでの嫌悪感も忘れ、高校の頃の先輩風を吹かしていた。


 森屋も久しぶりに会った嬉しさと懐かしさのあまり今の地位も忘れて、はしゃぎ出す。


 あの頃は本当に楽しかったと、昔の思い出話、同じサークルの仲間の話。当時応援していたアイドル『高円寺綾(こうえんじあや)』の話にも花が咲いた。


 残念ながらそのアイドルは、10年ほど前に、マンションの屋上から飛び降り自殺を図ってこの世を去った。


「あったなぁ……あの頃は綾ちゃん凄く好きだったんだよなぁ。2つ下だけどさぁ」と、繁がしみじみと言った。


「お互いにファン倶楽部入ろうとか言ってたよな」


 森屋はタバコを一本取り出し、口にくわえた。


「俺は今でも好きだぜ。なんで死んじゃったかなぁ……そう言えば、死んだ場所、うちのアパートの近所だぜ。あれが驚いたなぁ」


「あ、そうだよ……たしか飛び降りしたんだよな。でも、その時って、俺が結婚した年なんだ」と、森屋は口から煙を吐きながら言った。


 繁は箸を止めた。



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