テキストサイズ

未知夢

第14章 滝繁

 繁は何か違和感を感じた。


 なんだろう?


 だが、いくら考えても胸の中のイライラが邪魔をして、思い浮かばない。


 繁はそれがハッキリしないまま、ゆっくりと歩き出した。


「待って!」


 後から綾子が呼び止めた。


「!?」


 振り向くと、綾子は大きなボストンバックを抱えて近寄ってきた。


 それを見て、繁は思った。


 やっぱり、俺は過去に高円寺綾を助けたんだ。だから……生きてる。


 未知夢で無理矢理手に入れた3つの夢塊の役目は終わった。


「あなた、10年前に私を助けてくれた人ですよね?」


「信じないだろ」


「え?」


「俺が過去と未来を行ったり来たりしてたって話」


「それ、どういう意味ですか?」


 半信半疑どころか、微信多疑だ。


「今から10年前、俺のいた現代では……」


 ここで繁は口ごもった。本人を目の前にして「あなたは死んでいる」等と、胸に7つの傷がある、アニメキャラの様なセリフは言えなかった。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ