テキストサイズ

未知夢

第14章 滝繁

 挙げ句にはとんでもないことを、言い出した。


「いや、10年前はあなたは森屋ではなく、滝繁と付き合ってたんだ」


 とんでもない大ウソである。


「ええぇ〜〜……」


 綾子はおもいっきり、嫌な顔をした。


「いや……そこまで嫌がらなくても……」


「嫌がってないですよ」


 綾子は笑顔で返した。


「え?」


「実は今日、兄さんが『今でもお前のファンで、ずっと前から愛してくれてるやつがいるから紹介してやる』って言ってくれたんです」


「なに、それ?」


 繁はポカーンとしている。


「私も結婚どころか彼氏も出来ないままでさ。ま、あのバカ兄貴のお陰で汚れた女にされた事が原因なんだけどね。だから昨日、急に呼び出されて慌ててここに来たの」


 繁は何かに撃ち抜かれたように胸が熱くなった。


 だが、その話はこの世界の滝繁のこと。


 なんとなくこの世界の繁に腹が立った。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ