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未知夢

第15章 隠人

 そして、もう一度顔を上げた。だが、不思議なことに、新たな文章が、すぐに書き綴られていた。




→そうだ……これは夢だ。夢なんだ。


 気が付けば、警察署の取調室にいた。大森弘隆の殺害の容疑で。


 顔をボロボロにし、髪を短くして見つからないようにしていたが、そんなんで騙されるほど警察は甘くない。


 くだらない空想癖で、現実逃避して時間を無駄にしている。


 あの夜私は、大森の『うちに来いよ。飲んでゆっくり話そう』の言葉に、酔った勢いでついて行った。


 私はこいつが正直嫌いだった。やつは自分の自慢話や傲慢な事を強引に聞かせてくる。


『あの娘は俺に興味あったんだって。竜崎から奪ったわけじゃないぜ』と、言ったと思えば『俺ってなんでも上手くやれるからさぁ、失敗なんてないしな』


『世の中の連中は俺から言わせたら、餌しか見えてない豚なんだよ』


 聞く度にムカムカとしてくる。


『しつこいよお前、そんなくだらねえ話すんなよ!』と、言っても聞く耳もたない。


 ついに最大の事実が判明した。


『おい、これ見せたかったんよ。もう何年もたってるから時効だろうけどな』


 大森が見せたのは……大森と彼女が一緒に並んで撮った写真。


 その事を自慢げに話す大森に殺意を覚えて、殺害するチャンスを窺った。


 やつの家のチャイムが鳴り、やつが顔を覗かせる。


 私はしばらく寝たフリをしながら、凶器となるものを目で探した。



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