テキストサイズ

未知夢

第16章 変貌

「きさま……何をやったかわかってんのか?」


〔俺とお前は表と裏。だから、石は取るなってあの時言ったんだ。欲張って全部取っちゃうから……女と金だけにしとけばいい暮らし出来たはずだぜ〕


「何をやったかわかってんのかっ!!」


〔わからないな。どうするつもりだ? もう、俺はお前になって、お前は意識深く潜って消えてしまう〕


 繁はスクッと立ち上がり、トランクスと短パンを身に付けた。


「綾子ちゃん……ごめんな……ごめんな……」


 繁はそう言うと、表に出た。何時かわからない。


「まだ、間に合うな」


 アパートの階段を勢いよく下ると、まっすぐ走り出した。


 向かった先は理髪店だった。


 赤と青と白の帯が、らせん状にクルクルと回る看板が目に入る。


『カランコロン』


「いらっしゃいませ、はいどうぞ!」


 ドアを開けると小太りのマスターが自慢のヒゲをなびかせて、案内をする。


「マスター、一番短い丸刈りで頼む」



ストーリーメニュー

TOPTOPへ