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未知夢

第16章 変貌

 繁は百貨店の屋上にいた。


 覗き込むと梅田の町並みが見える。


 俺はもう俺ではない。あの日、俺は殺人者になった。心の弱さ、未熟さ、決して酒が悪いのではない。自分が悪いんだ。逮捕されなきゃいけないのは俺なんだ。


 挙げ句の果てに命を救ったはずのアイドルの命を奪ってしまった。


 もう、どこにも逃げられない。


「俺は……」


 殺人犯。


「そうだ……殺人犯。いま……俺は……誰なんだ」



 繁の頭の中が揺らぐ。


 時間……


 この世界。


 いない。


 なのに俺は存在する。




 俺は……


 なんなんだ?








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