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未知夢

第5章 訊問

 何度となく、ため息をつき、刑事は繁の顔をジッと見た。


「真面目に話を戻すぞ。つまり、死亡推定時刻の間には奥さんはいなかった。これはちゃんと裏もとれている紛れもない事実だ」


「マジかよ……」


 繁は机の上でうつぶせた。


 何も思い出せないのが悔しかった。


 そして、半べそ状態で言った。


「刑事さん……今の俺には何も出て来ないよ。怒鳴られようが、どつかれようが、拷問されようが、強姦されようが、浣腸されようが、本当に何も出てこない。覚えてないんだ」


「いや、最後はさすがに出るだろうが……じゃなくて、何かあるだろ! 覚えてるやつだけでも喋ってみろ」


 そうは言われても、繁には本当に限界だった。


 本当に何も覚えていない。


 喋ることはすべて片っ端から話したが、警察がほしい証言は何一つ出て来ない。


 それしか無かった。だが、自分じゃないとハッキリと言えなかった。



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