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未知夢

第8章 時間

 ビールで酔ったのかとも思ったが、缶ビール1本で酔うほど、酒に弱くはない。


 そう言えば、昔はよくここに来た。


 特に物思いにふけたかった。別に屋上だからって自殺するとかそんなんじゃない。


 ただ、他人を見たくなかった。


 当時は何事にも自信がなく、自分の周りにいる人は全部自分以上に優れている人間に見えた。


 だから、ここで人を見下ろしていた。


 一人になりたかった。それだけだ。




 静かに時間が過ぎていく。何気なく屋上から周りを眺めていた。


「あれ?」


 なにかを見つけた。


 向かいのマンションらしき建物の屋上に、目がいった。


 そこに若い女性が立っているのが見えたのだ。



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