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色を愛でる

第1章 ボルドーを塗る時

木曜 22時

丁寧に、丁寧に、足の爪を
ボルドー色のネイルポリッシュで染めていく。

一瞬、壁に掛けてある、明日着ていく予定のネイビーのコクーンワンピースに目を向ける。

明日、私はなんとも思っていない人とデートにいく。

なんとも思ってないのに、ペディキュアを塗るまでの凝りよう。
明日何がどうなるか分からない。
だから、手は抜けない。

ふっと苦笑する。

私はきっと、私を完璧に仕上げてしまったら、彼と寝てしまう。

ペディキュアを塗る手を止めて、ネイルポリッシュを片付け、ベットに向かった。

足先に視線を落とすと右足の小指だけ、色が違う。

ネイルポリッシュとワンピースを
交互に見つめてみても、
やっぱり塗る覚悟は出来なかった。

勢い良くベットに飛び込み、眼を閉じた。

もし、明日のデートで彼を好きになれたら、
気になることが、出来たら塗ることにしよう。

私は知らないうちに眠りについた。

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