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拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第3章 イチコの婚約者

土曜日の朝から、家中を掃除した。

客用の布団も干した。

夕飯のために、寿司の出前も予約した。

あっ、そうだ。
来客用の湯飲みとコーヒーカップを出さないと。

私は台所の釣り戸棚の扉を開けた。

そこには、さとぴの笑顔。

「さとぴ、イチコが男の人連れて来るんだって…。」

イチコが彼氏を連れて来るなんて、初めてだ。

連れて来るのが初めてどころか、彼氏ができるのも初めてだ。

「どんな人なんだろね。イチコの彼氏って。」

さとぴは、黙って笑うだけだった。

私は湯飲みとコーヒーカップを取り出すと、釣り戸棚の扉を閉めた。

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