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拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第12章 結婚式

式当日、会場に着くとイチコは先に来ていた。

会場は、邸宅レストラン。
一日借りきったそうだ。
高い塀に囲まれた、煉瓦作りのレストランは他人の目を気にせず、ゆったりくつろげる雰囲気だった。

お父さんは、イチコを見ようともしない。
すでに半泣きだ。

両家の控え室に入り、お父さんはモーニングに着替える。

イチコと私はそれぞれドレスと黒留め袖を着付けてもらう。

イチコは普段全然着飾らない。
今日のドレスもシンプルすぎるくらいのデザインだ。
それがイチコらしかった。

イチコ、きれいよ。

喉まで出かかったが、言えなかった。

もう胸がいっぱいで、どうにもならなかった。

大野家のご両親にご挨拶しようと控え室を出ると、ロビーにさとぴがいた。

真っ白のタキシードに身を包み、まぶしいくらいに輝いていた。

さとぴに会ったのは、京都に来た時と、コンサートと、両家の顔合わせの食事会。それだけだ。

さとぴは私に気づくと駆け寄ってきた。

私は、さとぴに頭を下げた。

智「約束、守りますから、お母さん。」

さとぴは、小指を立てて見せた。

「よろしくお願いします。」

私はそう言うのが精一杯だった。

ロビーの入り口が急に賑やかになった。

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