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拝啓、ムコ殿!【ARS・O】

第14章 金曜日の電話3

9月の半ば、残暑もやわらぎ夜はだいぶん涼しくなった。

金曜日の夜、私はテレビの前に陣取っていた。

夜8時からの音楽番組。

嵐の新曲披露がある。

イチコが1月に結婚してからは、イチコだけが夏に帰ってきただけで、さとぴとは一度も会っていない。

新婚旅行にはスペインに行ってきたと、イチコがお土産を持参してくれた。

ガウディの建築を見たり、美術館めぐりをしたそうだ。

旅行の写真を見せてくれた。

建築と食べ物の写真ばかりだった。

でも、数枚だけふたりが写っている写真があって、すごく和やかな雰囲気だった。

夕暮れのグエル公園で、さとぴがタイル細工に見いってる横顔の写真が素敵だった。

イチコが東京に帰ったあと、台所の吊り戸棚を開けると、その写真が貼ってあった。

ジャニショの写真の横に。

「イチコったら…。」

私は苦笑いしかできなかった。

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