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サバイバルヘルパー

第10章 嵐と小梅

 激しい雨風が、島全体を襲う。


 次第に、まとまった水が俊輔にかぶさってくる。


 だが、その水は雨の水ではなかった。


「うわぁぁ……波がきてやがる……」


 どこに逃げればいい?


 前方は波が巨大なモンスターと化して、怒り狂う。


 空には黒い雲がうねりながら、弾丸のような雨を降らせ、爆風が押し上げる。


 山に逃げれば何が飛んでくるかわからない。


 だが、ここにいても危険である。


 俊輔は木にしがみついたまま、動けない。


『バキバキバキバキ』


 どこかの木が、風に耐えきれずに折れた。


 かなり近い。


 顔を歪ませて、振り向いた。


 折れたのは、小梅が寝ていた木陰の木だ。


「婆さん……婆さん……死ぬな……絶対死ぬな!」


 海に目を向けた。


「ああっ!! くそーっ!!」


 俊輔は声を上げるしかできない。


 苦労して作ったいかだが、波の上で揺れている。


「俺のいかだ……やめろ……持っていくな」


 無情にも、波に押されては戻され、どんどん沖に向かっていく。



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