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サバイバルヘルパー

第10章 嵐と小梅

 俊輔は、思わず飛び出した。


 危ないのはわかっていた。だが、自分と小梅が生きて島から脱出するために造り上げたいかだを、黙って見ているわけにはいかなかった。


「くっそーっ!! 嵐なんかに渡せるかよ!! 嵐がなんぼのもんだーーっ!!」


 幾度となく、波が頭上から襲いかかり、足元をすくわれる。


 その重さと衝撃は想像以上だった。


 俊輔は気力で耐えるしかない。


 まだ、位置的には足がとどく浅い場所にいかだはある。


 絶対に帰ってやるという、強い気持ちが働いて、迷いもなく造れたいかだ。


 旅館で見た船舶免許を持った男性の魂が、力をくれたと信じていた。


 無事に帰って、ここに眠る人がいると伝えたい思いもあった。


 助けるのは、自分と小梅だけじゃなかった。島に眠る、屍となった人の心も助けたかった。


 そんな思いを繋げる大事ないかだ。


 泳ぎは苦手な俊輔だったが、泳いでみせた。


「うわっ……」


 足が届かない。いや、届かないわけではない。体の向きが、が斜めに入っているからだ。



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