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sugar-holic

第17章 思い出してしまうから

「切ないですね…」

「そう?」

私を見て、浅野さんは笑った。

だけど、力のない笑いかたで…

「もう一度、話されたらどうですか?」

「話?」

「浅野さんの今の気持ちを、ちゃんと話された方がいいと思います」

そうじゃないと。

浅野さんも奥さんも、相手を思いすぎて自分の気持ちを封印しているようで。

それじゃ、いつまでも想いが残ったままだ。

元にも戻れないし、先にも進めない。

私をじっと見つめていたけど、ふっと息を吐くと、片方の口角だけ上げて

「梢さんは?」

「え?」

突然話を振られて戸惑うと、確信めいた口調で言われた。

「ちゃんと話さなきゃならない人、いるんだろう?」

浅野さんにそう言われて、頭をよぎったのは。

強司。

あれから一度も、電話もメールもしてなくて…。

「何で…?」

「俺と話しながら、俺じゃない人を見てる目をしてた」

…見抜かれてたか。

苦笑いを浮かべて、下を向いた。

強司…元気なのかな。

散らかり放題だった台所。

私が週末泊まりに行っては片付けてたあの場所は…今、どうなっているんだろう…。

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