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ガンダムカイザー

第2章 ハリー・プラネット

爆炎の中から無傷のギルが出現して、ハリーは涼しい顔をしている。

「くっそ~、なめやがって、粉々にしてやるぜ」
ズシンは今度は金棒をぶんぶんと振り回してギルを攻撃する。

「砲撃がダメなら無駄な力押しか。単細胞だし暑っ苦しいゲス野郎だね~」
ギルは軽々と金棒をかわすと、鋭い剣撃で金棒を握っている右手を斬り落としてしまった。

無表情で迫ってくるギルにゲネスは恐怖を感じた。
「オ、オレが悪かった。許してくれ。た、頼むよ、ひどいことはしないでくれ」
ゲネスは震えながら命乞いをする。
この男は、こうやって命乞いをする人々をどれだけ苦しめてきたのだろう。泣き叫ぶ女のコをどれだけ凌辱してきたのだろう。

この世界では、かつて大きな戦争があった。
ハリーの街は戦火に焼かれて、ハリーの目の前で両親と妹は死んだ。両親と妹の血と肉片はハリーの脳裏から離れることはない。

「お前にも教えてやるぜ。一方的に殴られる痛さと怖さをな」
ギルの鋭いパンチやキックが戦意を喪失したズシンを叩きのめす。

ハリーのガールフレンドだった少女はゲネスのような卑劣な男に辱しめを受け、それを苦に自ら命を絶ってしまった。
「ごめんね」と少女が流した涙もまたハリーの脳裏から離れることはない。
少女は最期まで辱しめを受けたことをハリーには言わなかった。あの涙の意味を知った時、ハリーのマスターの力が覚醒した。
彼女の仇討ちに悪党を倒したのがハリーの初めての戦いだった。

「ひとつ、力のないオレは両親も妹も守れなかったこと。ひとつ、力のないオレは大切な女一人守れなかったこと。ひとつ、彼女を独りで逝かせたこと・・オレは自分の罪を数えたぜ。さあ、お前の罪を数えろ」

ギルの剣がズシンのコクピットをめがけて静かに鋭く振り降ろされる。

「や、やめろ。た、助けてくれ。頼む」
ギルの目が鋭く光る。発光してビームサーベルとなった剣の熱がズシンのコクピットを溶かす。
泣き叫ぶゲネスはコクピットの中で失禁していた。

ギルはコクピットを溶かしたところで剣を収めた。
ゲネスは助かったのだ。
しかし、いっそ殺された方がゲネスにとっては楽だったのかも知れない。
コクピットから引きずり出されたゲネスは、散々に苦しめてきた村の人たちに袋叩きにされる地獄が待っていた。

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