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遠い約束

第3章  喫茶室の情景 (二)


冴子は冬吾の口から夫の話が出るのを、なんとも言えない心持ちで聞いていた。

束の間、ふたりの間に沈黙の時が流れる。

やがて、細い指を組んでは離しながら
「そうでした、あなたはうちへ来たとき知ってらしたのね、私がいることを」

と冴子は以前から気になっていたことを尋ねる。

「ええ、晩餐に呼んで頂いたのが香月氏とは三度目の出会いでしたからね」
冬吾は1年前の夜を思い出す。

香月家の知人を招いての晩餐会はコックの腕が存分に奮われ、毎回評判のいいものだった。

軍人、軍関係者も珍しくはないその席で、冴子はあまりにも突然、冬吾と再会したのだった…。



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