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遠い約束

第1章  序〜喫茶室の情景 (一)


「ここからでも池がよく見えるのですね」

優しい声とともに、うす紫の着物を纏った女性がふわりと冬吾の前に現われた。

「冴さん…」
「ご無沙汰をしておりました」

軽く頭を下げると冴子は少し目を細め、幼なじみの顔を見つめる。

「さあ、どうぞ」
立ち上がり目の前の席を勧めながら冬吾は懐かしい人の気配を全身で感じていた。

公園内の蓮池をのぞむ窓際の席は初夏の陽を受けて白いテーブルクロスが眩しい。


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