遠い約束
第1章 序〜喫茶室の情景 (一)
いらっしゃいませ、とテーブルに近づく店員を目で制しながら
「冴さんは紅茶がいいかな?」
「ええ」
「では紅茶をふたつ」
と、冬吾は注文をすませる。
「珈琲でなくてよろしいの?」
「うん…今日ぐらい同じものをと思ってね」
少し照れたように微笑む冬吾の言葉が、冴子の胸に小さな波を立てる。
池ノ端にあるレストランの喫茶室は3階からの眺めが清々しい。
ゆったりした店内には室内楽が流れ、半分ほど席を埋めた人々が談笑しながら午後のひとときを過ごしていた。
そんな中、ふたりはどちらからともなく窓からの景色を見つめた。