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遠い約束

第5章  喫茶室の情景 (三)


それぞれの想いの中で流れた時間…

思いがけない巡り合わせからの再会は、ふたりの心を大きな波で揺り動かす日々だった。



もう二度と会えないと思っていた…けれど
ああ、やっぱり会うことができた
それなのにそばに行くことはできない
話し掛けることもできない
ただ見つめるだけ
すぐそこにあなたはいるのに…

ねえ、あなた、会いたくて、会うのが怖いのに…
会いたくてたまらない

冴子はその感情に耐えていた。


手を伸ばせば届くところにいる恋しい人
今すぐ攫ってふたりだけで消えてしまいたい
その手をとって…

冬吾もまた必死に感情を押さえつけていた。


会うたびにただ想いに耐えて見つめ合うだけだった。

今この時でさえ…


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