誰かお願いつかまえて
第8章 持つべきものは………
『――お疲れさま!』
そう言ってビールをユズに渡す。
全てのバンドの演奏が終わると、ライブハウスは関係者の飲み会の場へと変わる。
私もいつもおじゃまさせてもらっているのだ。
「ん、ありがと」
私から受け取った一杯を一気に飲み干す。
……なんで私の周りはお酒強い人ばっかりなの?
「久々だったから私も楽しかったよ!これだからやめられないんだよね」
そう自嘲するユズ。
平日、もしくは土日も普通に仕事をしているのに
いつ練習してるんだろうってくらい、ユズの生活はハードなものだ。
『でも私もやめてほしくないな…』
たまに聴きに来ることが私の癒しになってるし、こうでもしないと休みに外出する気にならないし……
「やだなー、そんな顔しないでって!私はしばらくやめる気ないから!
…ドラムのやつがさ、年も年だしやめるって言い出して。
急遽新しいメンバー探して……大変だったよ。まぁ腕のいいのが入ったからよかったけど」
『あ、やっぱりドラムの人変わったんだ!なんか雰囲気違うなーと思って……いい意味でね』
そう言うとユズはなぜか少し迷った顔をした。
「……ん、じゃ呼ぼうか」
『へ?』
「リョウ、ちょっとこっち!」
サングラスの彼がこっちに向かってくる。